記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

曲面の幾何構造とモジュライ

曲面の幾何構造とモジュライ曲面の幾何構造とモジュライ
(1997/07)
河野 俊丈

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恐らく10年以上前に買った本、ちょっと読んで積読だったが、読み始めた。まだ読んでる途中だが、やはりこの本はおもしろい。双曲幾何やモジュライ空間といったところがテーマ。数学セミナーに連載したものをベースに加筆した本とのことで、読みやすい。といって私レベルには電車の中で読めるほど易しくはなく、紙と鉛筆を持って読まないとよくわからないが、数学の本としてはかなり読みやすい部類だろう。図が豊富で、幾何の醍醐味を楽しめる。 著者は狙いの一つとして次のように述べている。モジュライ空間は様々な重要な数学の対象であるにも関わらず、その理解には深い関数論や代数幾何の素養が必要とされる。そこで、モジュライ空間の幾何を双曲幾何の観点から初等的に解説し、他の分野の方々にも近づきやすい形にときはなつこと。 本書ではモジュライ空間へのアプローチとしてタイヒミュラー空間が説明されている。私はタイヒミュラー空間は関数論系の本でちょろちょろ読んでいたが、これがなかなか難しく敷居が高い。が、本書を読んでイメージが沸いてきた気がする。タイヒミュラー空間にフェンチェル-ニールセン座標を入れる際に、途中で出てきた、双曲平面の直角六角形の合同類が3辺の長さで決まる、という定理が重要な役割を果たすあたりがおもしろい。複素解析が全くでてこない、純粋に幾何学的なタイヒミュラー空間へのアプローチが新鮮でした。