著者は精神科医。尾崎豊が境界性パーソナリティー障害だという情報がネットでよくあり、その流れで本書が出てきた。こうした精神科の専門の方から見れば、尾崎豊は間違いなく境界性パーソナリティー障害らしい。境界性パーソナリティー障害には光と闇の面があり、光としてはこれらの方は時にすごい創造性や魅力を発揮することがある、とのことで、その光の例として、尾崎豊、太宰治、三島由紀夫、があげらえている。私も尾崎豊と太宰治は似ていると思っていた。
私は尾崎豊をリアルタイムで見てきた世代で、ファンだった。独特の歌がすごくこころに響いた。なので雑誌などに載っている情報もリアルタイムで見てきたが、この人はこんなに芸術的才能やルックス、頭脳、身体能力、経済力にも恵まれているのになぜこんなに辛そうなのだろう、という疑問はあった。歌詞でも、”街が悲しい"、”平和の中で怯えている"といった言葉が頻出している。よく死ぬことを考えていたらしい。ものすごく辛そうに戦っているようだが、こんなに恵まれている人が平和な日本で何と戦っているのか。少年時代はそれが学校や親だったりしたのだろうが、卒業したら何と戦うのか...。こうした不満の原因が境界性パーソナリティー障害だという説明は非常に納得する。境界性パーソナリティー障害の方はいつも憂鬱な気分でいるらしい。尾崎豊の場合は子供の頃の母親との関係でこうなったのではないか、との著者の見解。本書は尾崎豊を見るうえで新たな視点だった。