記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち

元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち (光文社新書)
(2012/10/17)
吉田 たかよし

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これは良い本でした。著者はサンデージャポンなどでも有名な吉田たかよしさん。東大工学部の大学院で量子化学を研究後、NHKアナウンサーとして活躍、その後医学部に入り医師となるという異色の経歴の方。サンデージャポンの印象が軽そうであまり印象はよくなかったのですが、この方の本は良いです。頭のよさがよくわかります。 本書で著者は、周期表は多くの人が学校で習うものの、”量子化学を理解していない人が教える周期表の知識は、単なるセミの抜け殻である”と主張します。周期表はかなり深い意味、原理があるのにそれを知らないで丸暗記するからつまらないのだということでしょう。確かに本書で著者が語る周期表の世界はおもしろい。高校時代にこうした著作を読んでいたらもっと化学に興味を持てただろうな、と思いました。 本書で著者が随所で述べているのは、周期表で同じ縦の列にある元素は一番外側の電子の数が同じであるため性質が似ている。そのため、医学的観点からは体に必要な元素と同じ列にある元素は人体に害を及ぼしがちである。例えば、原発事故で有名になったストロンチウム。これは周期表では人体に不可欠なカルシウムの一個下。そのためカルシウムと間違えられ人体に取り込まれ、しかも骨まで届く。骨は骨髄で赤血球や白血球を作り出しているところであり、もうれつに細胞分裂をしている。細胞分裂しているときの細胞は遺伝子がむきだしになっている。このため放射性ストロンチウムが取り込まれると、DNAに害が及び白血病のリスクが非常に高まる、ということ。非常にわかりやすい説明でした。さすが化学研究者→医者の経歴を持った方ならではの説明、と思いました。 本書で一番印象的だったのは、天然の元素はほとんどは地球上では作られず、超新星爆発などによって作られた、ということ。要するに新しい元素を作るためには、1000万度を超える温度が必要であり、地球上ではそのようなことは起こらない。例えば陽子と陽子をくっつけようとすると、陽子と陽子は正の電化同士なので反発する。ただ一定以上のエネルギーでくっつければ核力が働きくっつくが、そのためには1000万度を超えるエネルギーが必要である。亜鉛ヨウ素などの鉄より思い元素を利用している私たちは、宇宙で繰り広げられた化学進化の歴史の上に成り立っている存在である。なんというか、我々人間は星から来た痕跡があるんだな、と、不思議な気持ちになりました。我々は星の子供、といってもよいかもしれません。