文科系のためのDNA入門 (ちくま新書) (2008/03) 武村 政春 商品詳細を見る |
- 23人ずついる二つのクラスから一人ずつ選び、ペアにして漫才をしてもらう場面を想定しよう。この場合、2の23乗通りの多様な漫才集団ができあがる。減数分裂が起こるときこれと同様に、第一染色体は祖父由来のもの、第二染色体は祖母由来のもの、という場合に、23本のそれぞれで異なるセットから選択的にピックアップされて生殖細胞ができる。すなわち、2の23乗の800万通り以上の組み合わせである。受精相手のペアでも同様に800万通り以上の組み合わせが生じるから、兄弟姉妹でも全く同じ染色体組成になることはそれが10人でも100人でもあり得ない。p.102
- これに加えトレードという仕組みがさらに多様性を生み出す。これは「乗換え」と呼ばれる現象で、減数分裂の初期に祖父由来の染色体と祖母由来の染色体がペタっと体を密着させる時期があり、このときそれぞれの染色体でお互いに対応する部分がトレードされるのである。どの部分がトレードされるかはランダムに決まる。P.105
- DNAは自分自身の設計図をコピーしてRNAという指示書を発行し、リボゾームまで郵送しそこでタンパク質を合成させる。これはすべての生物で共通であるがゆえに、「セントラルドグマ(中心教義)」と呼ばれる。P.118
- RNAは単なるDNA(設計図)のコピー(指示書)ではない。RNAは「酵素」としての役割も持ち、DNAと同じように「遺伝情報」としての役割も持ちうる物質である。DNA研究の進展はやがてRNAをDNA以上の存在へと押し上げていくに違いない。P.131
- ミトコンドリアに核とは別に独自のDNAがあるという事実は、ミトコンドリアがかつては独立した生き物であったとする仮説に大きな根拠を与えている。その根拠の一つが、ミトコンドリアのDNAの、核のDNAとは大きく異なる形にある。P.133
- 全DNAのうちタンパク質の設計図は2パーセントに過ぎない。残りのうち43%の部分は「トランスポゾン」と呼ばれるのの、あるいはそれに由来したものである。トランスポゾンの役割についてはDNA国会の最大会派であるにも関わらずよくわかっていないが、生物の進化に大きく関わってきたと考えられている。P.144
- DNAの個人差はおよそ0.1%程度であると考えられている。人とチンパンジーの違いは1%以上(3%)程度。とわいえ、0.1%といえども300万塩基に及ぶ。P.162
- 私たちのDNAには、ある決まった塩基配列が何回も何回も繰り返し出てくるような箇所が結構いろんなところに存在することが知られている。こうした繰り返し配列が存在するDNAの領域のことを「サテライト領域」といい、2個の塩基が何回も繰り返すようなものから、数百塩基の配列が何回も繰り返すようなものまで、さまざまなレベルがある。DNA鑑定によく用いられるのはこのうち短い配列が何回も繰り返す「ミニサテライト」あるいは「マイクロサテライト」と呼ばれる領域である。ミニサテライトなどにおける文字配列の繰り返しの数は人によって違うという”幸運”がもたらされた。これに気付いた科学者によって「DNA指紋」という新たな認識論へ昇華することになったのである。P.166
- その昔、DNAもタンパク質もまだ存在しなかったはるか昔、この地球上のある特定の部分にいた声明はRNAそのものだったと考える学者が多いのである。その最大の理由は、RNAにはDNAの仕事も、タンパク質の仕事もきちんとこなす能力があるからだ。創業時の社員は社長一人。仕事が成功するにつれ社員をやとい分業する。つまり社長がRNAであり、新たに雇われた社員がDNAとタンパク質だったというわけである。