著者は元
鳥取大学教授。専門の研究以外にライフワークとして
キツネノボタンや
ツユクサなどの雑草の種分化の機構を遺伝学的・
生態学的に解明する研究をされてきた方。本書では
ツユクサの遺伝子の研究を元に日本での
ツユクサの由来について語ります。
ツユクサの染色体数は様々あるようで、2n=44,46,48,50,52,86,88,90などいろいろあるようです。おもしろいですね。88は44の倍数体、46,48,50,52は44の異数体と呼ぶそうです。
新鮮だったのは雑草の定義、説明。我々は野生に生えている草をなんとなく雑草と読んでいますが、我々が雑草と読んでいるのは農地に生える草木というある種のグループであること。つまり人間の近くで生きていくのが得意なグループ。田んぼや畑は人によってつねに定期的な攪乱(かくらん)を受ける。森に生える野草や樹木の幼木などはこうした場所へは侵入できない。雑草は鍬でけずられ釜で刈られても農地に子孫を残し生きつづける。人が耕作を放棄すると野草や幼木たちが侵入し、雑草は駆逐されやがて田畑は森林に遷移していく。雑草は生態的弱者である。「雑草のごとく、雨にもめげず」というのは雑草を誤解した文学者たちの表現に過ぎない。
なるほど、雑草と言うと普通の人がイメージするのは強靭な生命力ですが、実は彼らは人間の近くでないと生き残れない弱者のグループなんですね。犬や猫みたいなものでしょうか。確かに山や森では普段身近で見るような雑草、生えてないですね。