植物のこころ (岩波新書) (2001/05/18) 塚谷 裕一 商品詳細を見る |
- ソメイヨシノは種間雑種なので種子がつきにくい。そのためクローン増殖されている。そのため一斉に咲く。
- ヒガンバナも三倍体のため種子がほとんどつかない。そのためクローン増殖されており、全く同じ姿をしている。ニホンスイセン、キンモクセイ、シャガもそう。
- 反面、種子が取れる植物も多い。が、メンデルの法則により、この姿かたちが親と同じになる確率はとても低い。確実に親と同じ子が欲しいのであれば、クローンがいい。
- 竹は地下茎で横に横にどんどん広がっていく。地上に一本一本伸びている竿は枝に過ぎない。竹藪は全体が一つの個体、クローンである。なんと巨大な生物だろう。
- 有性生殖に欠かせないのが、細胞核の中にある染色体のセットを正確に半分に分ける減数分裂の過程である。その結果として染色体のセットが親の半分しかない配偶子という特殊な細胞を作ること、そして配偶子同士の接合によって染色体のセットを再び元の数に戻すこと。この二つの過程によって繁殖する方法が、有性生殖である。だから、有性生殖の前後では、遺伝子の構成が変化する可能性がきわめて高い。
- 植物は枝が折れても新しい枝が脇から出てくる。挿し木をすれば根のない茎から根が生える。これは分化の全能性があるから。動物細胞はこうはいかない。赤血球になる細胞は白血球になることはない、植物細胞の分化はかなり可逆的である。
- 植物の専売特許のようであった分化の全能性は実は動物も持ち合わせている。だが、動物ではその能力を発揮するために必要な条件が難しすぎたから当初動物にその能力はないと考えられていた。
- 重力を感知するために特殊な細胞を分化させている。根冠にあるコルメラ細胞、茎葉では内皮の細胞。それぞれにはアピロプラストというのが発達していて、これが重力に応じて細胞の中を転がり落ちる。すると細胞はアミロプロストの落ち込んだ位置から重力の向きを感じ取り信号をだし、根では重力の向きに伸びていき、茎では重力の向きと反対の方向に伸びていく。
- つるが巻き付く仕組みは、茎が何かに触れたと感じると、その触れている面の伸びをやめ、反対側の面の伸びを増すことで曲がる。P.108
- 植物を見ていると、生物の本質の多くは、遺伝子によって決められた機械的な営みであると言わざるを得ない。からくり人形のからくり、あるいはコンピュータのプログラムにあたる部分が、生物現象の正体である。たとえばアゲハのさなぎは枯れ枝につくと茶色に、新しい枝につくと緑に擬態する。取りに見つからないようにという視点からするとすごいことのように見えるが、実はアゲハは色を見て判別しているのではなく、ざらざらして広い足場では茶色になり、つるつるした細い足場では緑になるというプログラムをたまたま獲得したらしい。実際アゲハをつるつるして細い茶色いものの上でさなぎにさせると緑色になる。進化の過程は偶然の積み重ねに依存しており、結構いい加減である。P.159
- オフリスと蜂のようなケースを見せると進化という概念になじみのない人たちはすぐに、「偶然の進化でこんなことが起きるはずがない。神様がつくったに違いない」とい言い出すが、誤解である。花が昆虫に似た姿になるのはそんなに不思議なことではない。昆虫が持っている羽は、平面構造をしていて薄いという点でもともと葉や花弁と似ている。実は植物と昆虫とで共通する遺伝子がダメになると、植物の場合は葉が細く短くなり、昆虫の場合は羽がやはり細くなってしまう。一見したよりは実は似た器官なのだ。P.171
- ナズナのような一年生の植物で、花が小さく、たくさんの個体が密生するようなタイプは多くの場合、自家受粉をしている。一年草なら遺伝的な損失が蓄積してきても、毎年やり直しがいくし、ゲリラ的に空き地に侵入して一騎に繁殖するには自家受粉したほうが手っ取り早いからだ。...また本来は虫媒花だが訪問昆虫が来なかったら最後の手段として自家受粉するものもある。キク科の植物やツユクサである。ツユクサは一応虫の来るのを待っているが、来ないとよいしょと雄しべを縮ませて自分の雌しべのあたりに持っきて自分の花粉を自分の雌しべになすりつける。また、自分の花粉が決して自分の雌しべにつかないようにしているものも少なくない。キキョウは花を開くと真っ先に雄しべを熟させておき、虫に他の花に花粉を送り込ませたのち、雌しべを開く。このように一つの花の中で雄しべと雌しべの熟す時期を違えるやりかたを取っている植物もかなり多い。また自家不和合成といって、自分の花粉は自分の雌しべの柱頭についても受精できあによう遺伝的に決まっているものもある。この自家とは遺伝的な意味であって、自分自身の花だけでなく、遺伝的に同じタイプの花から来た花粉は受精にかかわることができない。
- 過去にも未来にもとらわれない生き方(ステファン・ボディアン) 精神世界、特にアドヴァイタ系に興味がある人には痒いところに手が届くようなガイドブック。
- 無境界(ケン・ウィルバー) 明快にアドヴァイタやクリシュナムルティの世界を解説した本。ウィルバーの知性がほとばしっています。ファンが多い本です。
- 覚醒の炎(パパジ) 珠玉の言葉で溢れたパパジの講話。考えれば考えるほど、求めれば求めるほど遠ざかると繰り返し語る強い言葉で、外に向かい心が収まっていきます。
- 奇跡の脳(ジル・ボルト テイラー) 脳の世界と精神世界の架け橋のような良書。
- 進化しすぎた脳(池谷 裕二) 議論が軽快、明快で気持ち良い本でした。著者の切れ味の良さが伝わってきます。
- 植物のこころ(塚谷 裕一) 植物に対する疑問を平易な説明で解説してくれる良書。
- アイ・アム・ザット 私は在る―ニサルガダッタ・マハラジとの対話 珠玉の言葉で溢れている本。いっぺんに読んでも消化しきれないので、バイブルのように少しずつ読んでます。