進化しすぎた脳 (ブルーバックス) (2007/01/19) 池谷 裕二 商品詳細を見る |
- 報酬系の神経を活用して、ネズミをラジコンにする研究が成功した。
- 脳の大きさは人よりイルカのほうが大きい。
- 大脳皮質は全ての哺乳類で6層構造を持っている。
- 池谷さんの研究では主にネズミを研究対象にしている。
- 脳はそれぞれ制御する身体に対応した部位がある(体性感覚野)。それを表す脳地図が作られている。
- 第五視覚野は動きを認知する個所。ここに損傷を受けると動いているものが見えなくなる。ボールが止まっていると見えるが動き出すと見えなくなる。
- 水頭症にかかり脳が健常者の10%になったのに大学の数学家で主席を取った人がいる。実は脳はかなり余裕がある。進化しすぎていて体がそのリミッターとなっている。将来予期せぬ環境に出会った時に対応するための余裕といえる。
- 人間の視神経は100万本。デジカメでいうと100万画素程度しかない。それなのに風景がガクガクに見えないのは、脳が補正処理をしているから。脳は飛び飛びの情報の中間を埋めて滑らかにする機能がある。
- 脳の時間はコマ送り。最低単位が10ミリ秒程度。これ以下の時間は同時と認識される。
- 人間はかなり昔から光の三原色により全ての色が再現できることを知っていた。後に生物学が発展して、眼が、赤、青、緑、に対応した色細胞が網膜から見つかり驚いた。でも実はこれは驚くべきことではなく、当然。網膜に3色に対応する細胞があったから人間にとっての色の三原色が3色になった。もし赤外線に対応する細胞があったら光は三原色にならない。人間の目は世の中に存在する電磁波の限られた波長しか感知できない。
- 網膜の色を感じる細胞は周辺に行くとほとんど密度がゼロになっている。実は人間は周辺の方では色を認識できていない。実は脳が色を補っているだけ。実際実験してみると、周辺の方でのクレヨンの色は認識できない。が、中心部で赤と認識したクレヨンは周辺にもっていっても赤と認識される。これは脳が補正しているから。
- 覚醒感覚、つまり音楽を聴いて美しいと思ったり、悲しい気分になったり、林檎を食べておいしいとか、こうした生々しい感覚をクオリア、という。多分ラテン語。僕らが世界を体験しているという実感。
- 人がボタンを押す実験でわかることは、無意識が動かそうという準備を始めてから、「動かそう」というクオリアが生まれる。体を自分の意識でコントロールしているつもりになっているだけ。自由意志というのはじつのところ潜在意識の奴隷にすぎない。クオリアというのは脳の活動を決めているものではなく、脳の活動の副産物である。
- 恐怖を生み出すのは「扁桃体」という場所。ここは危険な体験をしたという記憶を脳に植え付けるために重要。ただ扁桃体の活動にはクオリアはない。クオリアは脳の別の経路で生まれる。
- 「扁桃体」がなくなると恐怖がなくなり、本能が剥き出しになる。扁桃体を破壊した猫を同じ檻に入れたら性欲剥き出しの目も当てられない状態となった。
- 人間に記憶はわざと曖昧にしている。写真のような記憶力だと変化に追従できない。髪型や服装が変わった人を同一人物と認識できない。下等な動物ほど記憶が正確でなかなか消えない。
- 今の脳科学者は知識が断片。知見のひとつひとつが大きなストーリーとしてつながってこない。そのためのフレームワーク、統一理論のようなものを待っている。