おもしろい本だった。
著者は
ジョンズ・ホプキンス大学医学部・
神経科学科教授。脳の可塑性の研究分野では、国際的リーダーの一人。
著者が一番いいたいのは、本書の中で何度も繰り返される、”脳は3重ねのアイスクリームコーンのようなもの”というところだろう。とても視覚的なわかりやすい例えだと思う。1段目はカエルが持っているような脳幹、小脳、中脳、2段目はネズミが持っているような
視床、
視床下部、
辺縁系、3段目はねずみでも持っているが人間で巨大化した大脳皮質。つまり、脳は綺麗にデザインされたようなものではなく、進化の中で新しい機能を積み重ねて言ったようなつぎはぎだらけのものだ、ということだ。
そしてこうした脳の特性から、なぜ人間はどんな文化でも宗教を持つのか、といった人間の特性が説明される。確かにどこの文化でも宗教に類したものはありそうである。脳は物語作り、の性癖を持っているらしい。脳はわずかな知覚、記憶の断片を繋ぎ合わせて物語を作ろうとする特性があるらしい。
確かに人は思春期くらいになると、人は何故生きるのか、人生の目的は何か、とか考え始める。これは、我々の人生のストーリーは何か、といったことだろう。日常の出来事は断片的に見える。それに何か一環したストーリーがあるはずだと。また、人の人生が死んだら無になる有限のものだとすると、生きる意味なんてないような気がする。こうなると、死後の人生、輪廻転生といった概念を発明しストーリーを作り出す。こうしたことが人が宗教を求める理由なのだろう。そしてそれは、左脳の特性である。
それにしても、こうした
脳科学の本やアドヴァイタ系精神世界の本を読んでいると、”ストーリー”というキーワードが頻出する。この世界は類似点が多く、興味深い。