楽しい本です。
著者は
帝京大学教授でプラズマ理工学などを専門とする方。”自身、高校までは学校の勉強が嫌いだったので、勉強嫌いの学生たちに学問の面白さを伝えることをライフワークとしている”とのことで、その熱意が伝わってきます。本書もとてもおもしろい。著者の他の本も読んでみたくなった。
応用上重要な
複素解析のポイントがコンパクトにまとまっている。また、随所に
流体力学や
電磁気学での応用例が載っている。そして、
複素解析は高度な物理な世界で多用されるとのこと。上級の
量子力学の本を読むと、
リーマン面や解析接続、複素
積分、といった用語が頻出し、まるで
複素関数論の参考書のようにみえるとのことです。私は数学科で
複素解析を学びましたが、こうした物理での応用例はあまり知りません。こういうのを聞くと、上級の
量子力学というのを学んでみたくなりますね。こうした物理系の人のほうが道具としての数学の真髄を知っているのかもしれません。解析接続は宇宙物理学の時空領域におけるコーシー境界として使われるそうです。こういうことが書いてあると勉強の意欲に繋がります。
本書でもう一つ良いのは、数学史に関する記述もあること。
複素解析を作ってきたコーシーやリーマンといった人の記述や年表が載っています。コーシーもリーマンも日本で言うと江戸時代の人ですね。江戸時代に既にこんな高度な理論が構築されていたのですね。日本の江戸時代に、ドイツではリーマンが
リーマン面、リーマン
幾何学、
リーマン予想、などを繰り広げていたことに驚きます。