記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない

曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない
曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない樋口 禎一 山崎 晴司 田代 俶章 渡辺 公夫

森北出版 1997-03
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おもしろそうな本だが、ネットでほとんど書評が見つからないのが若干怖いと思いつつも、お値段もお手ごろなのでまあいいかと思い買って読んでみた。ネットで出てくる情報では、間違いがある、とか、誤植が多い、とかネガティブな情報が多いのだが、この値段で層係数コホモロジーについて比較的易しい口調で書いてあるので貴重な良い本ではないかと思う。私はこの分野の勉強は始めてであるが、読んでいるうちに層係数コホモロジーの感覚が少し掴めてきた気がするので、この分野の入門には良いのではないかと思う。 ちなみにネットの情報では、”層がハウスドルフ空間であるという致命的な間違いがある”との情報があるが、私の第一版第二刷では、一般には層はハウスドルフにならない、と書いてある。第一刷ではもっとひどかったのかもしれない。 著者は樋口禎一さんをはじめとする東京教育大学出身で、教育学部系などで教鞭をとっている方たち。数学者というよりは数学教育者の立場に近い方たちだろうか?どんな方たちなのかネットで情報がほとんど出てこないのでよくわからないが、高名な数学者ではなさそうである。 私は勉強になり読んで良かったと思うが、苦言もある。著者は前書きで本書のコンセプトを、”我々は微積分に続く数学を、リーマン・ロッホの定理を中心に解説しているので、中学・高校の数学の先生は、微積分の次にこのような数学の世界が広がっていることを生徒に伝えて欲しい”と述べてますが、本書では無理だと思います...本書は証明抜きの定理もあり、駆け足でリーマン・ロッホの定理まで証明を繋いでいるという印象です。このようなコンセプトの本であれば著者たちはもっとこの内容を消化して池上さんのようにわかりやすく説明する必要があるはずだが、消化しきれているのだろうか、と思ってしまう。この点は著者たちも反省があるようで、あとがきに、”リーマン-ロッホの定理を算数のレベルにまで引きずりおろすことができれば大成功であるが、力不足でそこまではできなかったのが残念である”と述べている。