記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

奇跡の脳

奇跡の脳奇跡の脳
(2009/02)
ジル・ボルト テイラー

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脳卒中になった気鋭の脳科学者が、脳卒中の体験から回復までと、脳卒中の体験により理解した脳の神秘を描いた作品。全米50万部の大ベストセラーだそうです。噂に違わずすごい本でした。 脳の本ですが、内容は非常にスピリチュアルというか、エックハルト・トールさんなどがいっていることと非常に似ています。脳のおしゃべりがやむと平和な感情が見えてくる、とか、そのためには現在の感覚に集中することが有効であるとか。もちろん筆者がこうしたスピリチュアル系の本を読んでいる可能性もありますが、そうでないとしたらこの類似性は驚くべきことだと思います。というか、エックハルト・トールさんに限らず、多数の精神的覚者が体験してきたものはこうした脳の生理に基づいたものであるということなのでしょう。こうした話を普通の人が言っているのであれば眉唾ですが、気鋭の脳科学者が言っているというところに説得力があります。 エックハルト・トールさんなどがPower of Nowでいっていることと非常に似ていますが、それをより脳のことば、科学的なことばで説明しているという点で新鮮でした。素晴らしい本です。 これを読んでいると本当に脳というのが分散処理システムだというのがわかります。人は一人と言うよりは実際は社会のように様々なキャラクターの集合体である。人はつい悲観的なマイナス思考の考えに引き込まれがちであるが、それは脳の中のごく一部、筆者によれば0.001%程度の回路である。私もよくマイナス思考に囚われてしまうことがありますが、これは自分の中のごく一部なんでしょう。 また、左脳が時を刻んでいる、というのも印象的でした。左脳の動きが止まると時の流れが止まるそうです。人は自然に時間の流れがあるように思いますが、そうではない。人間の高度な能力により生み出されているものである。もちろん物理的な時間というのは存在しますが、時間感覚というのはある意味幻想なのでしょう。 尚、著者の講演ビデオもあります。本書の抜粋のような内容です。本物の脳を持って熱く語る著者の姿、ネットで200万回以上のヒットを続けているそうです。 奇跡の脳 以下、抜粋。
  • 左脳にあった時を刻む機械、筋の通った思考を助けてくれたあの時計が、今は止まっていたから。(P.42) ・左脳とその言語中枢を失うとともに、瞬間を壊して、連続した短い時間につないでくれる脳内時計も失いました。...ですから、何事もそんなに急いでする必要はないと感じるようになりました。波打ち際を散歩するように、あるいは、ただ美しい自然の中をぶらついているおうに、左の脳の「やる」意識から右の脳の「いる」意識へと変わったのです(P.72)
  • 頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでよい。(P.132)
  • 2001年以降、アンドリュー・ニューバーグと故ユージーン・ダギリ両博士はSPECT技術を利用して宗教的体験をもたらす神経構造を明らかにした。チベットの僧侶とフランシスコ会の修道女がSPECT装置の中で瞑想あるいは祈る際の脳を計測した。(P.166)
  • 左脳は細部で頭が一杯で、分刻みのスケジュールで人生を突っ走る。一方、右脳はとにかく現在の瞬間の豊かさしか気にしません。(P.170)
  • 左脳の最も顕著な特徴は、物語を作り上げる能力にあります。左脳マインドの言語中枢の物語作りの部分は、最小限の情報量に基づいて,外の世界を理解するように設計されます。それはどんな小さな点も利用して、それらをひとつの物語に織り上げるように機能するのです。最も印象的なのは、左脳は何かを作るとき、実際のデータに空白があると、その空白を埋めてしまう能力があること。(P.175)
  • 左脳が真実だと信じ込んで作る物語には冗長な傾向も見られました。まるで反響しているかのように心にくりかえしこだまする思考のパターンのループができてしまうのです。わたしたちは知らず知らずのうちに、最悪の自体ばかり考えるようになります(P.176)。
  • 左脳の物語作家がくれる強迫観念なんて時間の無駄だし、感情面で人を消耗させるだけ。脳卒中のおかげで自分で手綱を握って意識駅に自分自身を現在に引き戻すことにより、過去の出来事を考えるのを止められると学んだのです。(P.180)
  • 脳がとても批判的で非生産的な、あるいは制御不能のループを働かせているとき、わたしは感情的生理的な反応が去っていくのを90秒間じっと待ちます。それから脳を子供の集まりみたいなものだとみなし、誠意を持って話し掛けます。「いろんなことを考えたり、感じたりするあなたの能力はありがたいわ。でもわたし、この考えや感じにはあまり興味がないの。だからもうこの話は終わりにして頂戴。」(P.185)
  • ようするに、特殊な思考パターンとのつながりを断ち切るように脳に頼んでいるわけです。この頼み方は人によって違うでしょう。私は適切な感情を持って情緒たっぷりに物語作家に語りかければ、もっと話が通じることを発見しました。脳が聞く耳を持たないときは、メッセージに何か動きの要素をつけくわえます。人差し指を振り回したり、両手に腰を当てて仁王立ちしてみたり。(P.186)
  • 脳と身体の中の細胞の99.999%は私が幸福で健康で成功することを望んでいるはずです。でも、ほんの一握りの物語作家は、わたしが喜ぶことと無条件にはつながっておらず、内なる安らぎの思考パターンばかり試そうとするのです。この細胞のグループをいろんな名前で呼んでいます。「ピーナッツ・ギャラリー」、「役員会の面々」、「ちっぽけなくそ委員会」などなど。この連中は、頭の中の言葉を使って,悲観に満ちたループを走らせることに情熱を燃やします。この連中は、嫉妬、恐れ、怒りといったマイナスの属性を利用します。(P.186)
  • 躾に反応する物語作家のこっけいなふるまいには、思わず吹き出しそうになります。マイナス思考の細胞たちは、幼い子供のように私の言うことを聞かず、わたしがどれだけ本気なのか試そうとするのですから。
  • 生理的なループがやってきたときは、それがもたらす感情にすべてをゆだねるのが一番。90秒間、その回路がやりたいようにさせればよいです。子供と同じで、感情は聞いてもらったり認めてもらったりすると収まるものです。(P.190)
  • 苦痛は、からだのどこかに外傷があることを細胞が脳に伝える手段です。ひとたび脳が苦痛の存在を知ると目的は達成され、痛みは軽くなったり消えたりするわけです。(P.192)
  • 「悟りとは、学ぶことではなく、学んだことを忘れることだ」(P.195)
  • 安らかな右脳マインドに戻るには、感覚情報がからだに流れこむときそれに注意を払うことがとても役立つことに気付いた。(P.198)。触覚、嗅覚、視覚、聴覚に注意を払うことが有効。
  • ヨーガや太極拳はリラクゼーションにつながる驚くべき道具となる。(P.207)