記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

自我の終焉

自我の終焉―絶対自由への道自我の終焉―絶対自由への道
(1980)
J.クリシュナムーティ

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真理は誰か他の人から与えられるものではなく、あなたが見つけ出さなければなりません。そのためには、精神が直接に知覚しうる状態でなければなりません。抵抗や、防御、守勢という姿勢があるときには、直接に知覚することができないのです。理解は、あるがままのものを知ることから生まれます。あるがままのもの、すなわち実体とか現実と言われるものを、解釈したり非難したり、正当化したりせずに正確に知ること、それこそ「知恵」の第一歩なのです。P.5

クリシュナムルティの1953年の著作(原題は、The first and last freedom)。クリシュナムルティの本は講演録が多いのですが、これは珍しく自身による著作であり、クリシュナムルティの思想がよくまとまっている良書です。 私が最初に手にしたクリシュナムルティ本です。最初に読んだのは20年以上前ですが、インパクトがありました。平易な言葉ですごいことをいっているな、という印象でした。最近久しぶりに読み返しましたが、やはりこの本は色褪せません。クリシュナムルテイの本はいろいろ読んでますが、お気に入りは本書と、生と覚醒のコメンタリー、子供達との対話、です。 最近クリシュナムルティ以外の本もいろいろ読んでいますが、やはりクリシュナムルティは一味違うという印象を改めて持っています。クリシュナムルティの特徴として、自我がよりどころになりそうなものを全て否定していく点があります。甘い言葉はいわない。従って、彼は方法や目標といったことを明確に示しません。従って一見教義体系が整理されていないように見えてわかりにくい。しかしそこが真髄なのでしょう。わかりやすい教義体系があると人はわかった気になってそこで停止する。そして現在の位置と目標を確認して、今のまま進めば将来は目標に達することができるだろう、と安心して止まる。自我にとってはこれが楽なのでしょう。彼は全てを否定して自我のよりどころをなくして自分で見えてくるものを発見せよ、といっているものだと思います。 彼の有名な言葉に、Truth is pathless land、があります。真実というのもはあるのだが、それに向かっていこうとか考えるのは間違いである、ということだと思います。真実と言う目標、そしてそれに向かう方法、通常の宗教ではそれを示すのですが、それを示したとたん人はそれに乗ったと思うことで安心して止まってしまう。彼はそれを否定し、あなたにできることは目の前の自分を理解し、自分の中の虚偽を見つけていくことだけだ、といっているのだと思っています。