記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

探究する精神 職業としての基礎科学

栗先生の本はいつも内容が濃くはずれがなく、買ってよかったと思う。本書もすごく良かった。

 本書では大栗先生の少年時代から大学、研究者としての自伝的な内容が記載されている。物理学者として世界的に大活躍されている大栗先生。どのような人生を歩んだらそのようになれるのか、非常に興味があった。

 

まず気になるのはそのご両親。お店を経営されている方とのことで、アカデミックの方ではなさそうである。そしてこのお店の近くに大きな書店があり小学生の頃からそこに通いつめていたとのこと。ポイントは本か。そしてブルーバックスシリーズに心を引き付けられ、都築卓司の”はたして空間は曲がっているか”などを読んでいたが一般相対性理論はさっぱりわからず、”いつか理解できますように”とお稲荷様に願掛けしていたとのこと。
このあたり非常に共感する。いわゆる科学少年だ。わたしもそうだった。そして同じく、ブルーバックスの都築卓司シリーズを読んでいた。そしてさっぱりわからなかった。今にして思うが、都築先生は一見わかりやすそうに見えるが、実はあまりわかりやすい本ではなかったと思う。

やはり少年時代に科学に強く憧れ、多少背伸びして本を読むような体験が大切だと思う。しかしわからないのが、なぜこのような科学にあこがれる子が一部いて、その他大部分はそうでないのかだ。これはいつも私の息子たちを見て思う。私も小学生の頃などアインシュタインなどの天才たちに強い憧れを持っていたが、息子たちはそんなことに全く興味がなさそうである。いろいろ興味を引きそうな本やテレビなどネタをまいておくのだが、全くひっかからない...。何よりも興味があるのはゲームやスマホである。どうしたら子供たちに科学への強い興味を喚起できるか、本当に知りたいところである。

 

そしてもう一つ印象に残っているのが、ウィッテンらの論文で”クォークが何種類あるかは、カラビ-ヤウ空間の幾何学的性質で決まる”という論文に心を奪われた、というところ。この気持ち、すごくよくわかる。こういうのがモチベーションになりますね。私も数学や物理の勉強を続けてますが、こうした”知りたい”といったことがモチベーションになっている。最近ウィッテンの”弦理論の数学は何故か22世紀の数学が20世紀に間違って出てきたもの”という発言を見て超弦理論の数学に非常に興味を持っている。私の興味は物理よりどちらかというと数学なので超弦理論を理解したいとはそれほど思わないが、超弦理論の数学はなんだかものすごい未来的な世界のようであり、かつ私がもともと興味のあるモジュライ空間なども大きく絡むようであり、これは勉強しないわけにはいかない、という思いである。少しづつでも理解したいところである。

本書では天才物理学者ウィッテンも時々出てくる。プリンストン高等研究所でも天才ばかりが集まっているわけではないが、ウィッテンだけは例外で、思考の速度が違う、とのことであった。

 

大学時代の勉強法ではいろいろと参考になった。人生で一番勉強した4年間だったとのこと。数学の自主ゼミでは、テキストをみないで、テキストを自分でまとめたノートだけを見て発表するように指導をうけたとのこと。また中学時代には先生が出題するパズルを毎週解くことで数学が上達した経験から、物理で学んだことを身に着けるために問題をたくさん解く必要性を感じていたとのこと。この自分でノートにまとめ直すこと、小平先生など他の方も良く記載していますが、非常に重要なのだと思う。また大学になると受験から解放されついつい問題演習を軽視しがちだが、やはり地道に問題演習を重ねないと数学や物理学の理解は深まらないのだと思う。

 

そして英語教育に関する記載もあった。大栗先生は中高の英語教育以外では英会話教室は大学のときに半年程度通った程度だが、アメリカの大学で問題なく教授を務められている。そして日本人に必要なのは、英語教育よりむしろ国語教育の問題と感じているとのこと。ここも共感した。自分の国語力の限界が英語力の限界だと思うが、国語力も怪しい人が多いだろう。日本人だから日本語は大丈夫というのは間違いで、日本人だからもちろん日本語の日常会話は誰でもできるだろうが、論理的に正しい文章を喋れる、書ける人は多くないと思っている。日本語で論旨がまとまっていない人は英語にしても同じだろう。

栗先生の英語はYoutubeでみることができるが非常に流暢である。このカルテックでの講義、まさに私が最近知りたい内容であり非常に良い。字が見えにくいのが少し残念。

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