河田雅圭(東北大教授)等5人による共同執筆・翻訳の本。
ダーウィンから利己的遺伝子で有名なドーキンズまで、古典的な進化論から最先端までを俯瞰します。よくまとまっていて良い本だと思います。
受けた印象としては、結局進化論は諸説あって、有力な説というのはあるが、あまりはっきりしていないのだな、ということ。非常に長い年月で起きる過去の事象であり実験や観察が困難なのでそうなるのですね。
印象的だったのは利己的遺伝子の解説。この、利己的遺伝子、やたらといろんな本で目にするキーワードです。生命、進化の単位は遺伝子であり、個体はそれを運ぶ乗り物に過ぎない、というセンセーショナルな説ですね。やたらとクローズアップされていますが、ただ現在研究の世界ではあまり注目されていないようです。2005-2010年の論文では人文科学系の論文では20程度、自然科学系の論文ではそのほとんどがドーキンズの意味した利己的遺伝子ではなく、マイクロサテライトやトランシポゾンといった自らを増やしていくDNAの一部である、いわゆる利己的DNAを指しているとのこと。ドーキンズの利己的遺伝子、というのは研究テーマというよりは哲学に近い扱いになっているようですね。
この”知りたい!サイエンス”シリーズ、初めて読みましたがいいですね。図が豊富で、テーマやまとめ方が私の好みです。思わず他の本も5冊くらい注文してしまいました。