記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

図説 地図とあらすじでわかる!万葉集

図説 地図とあらすじでわかる!万葉集 (青春新書INTELLIGENCE)図説 地図とあらすじでわかる!万葉集 (青春新書INTELLIGENCE)
(2009/04/02)
不明

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昔から俳句が好きなのですが、近年植物に興味を持ってから万葉集に興味を持つようになりました。たぶん、牧野記念庭園で万葉集にまつわる植物の展示を見てからだと思います。 牧野記念庭園 これは歌が詠まれた地図とともに歌を平明に解説してある良い本でした。 以下、印象に残った点。

万葉集は全文が漢字で書かれている。編集された頃には、まだカナ文字がつくられていなかったので、中国伝来の漢字を用いて独特の表記をした。「万葉仮名」と呼ばれるものである。P.16

そうなんですね。例えば、有名な 石ばしる、垂水の上の、さ蕨の 萌え出づる春になりにけるかも は、 石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 などとなるそうです。

妹(いも)も我れも 一つなれかも 三河なる 二見(ふたみ)の道ゆ 別れかねつる (妻も私も一つだからか 三河の二見の道からわかれがたいことだよ)(巻三・二七八) P.115

何故これが印象に残っているかというと単に私が三河出身だからなのですが、万葉集三河の歌があるというのは知りませんでした。なんか嬉しいです。豊川市のあたりだそうです。万葉集というと奈良や京都のイメージがありましたが、結構いろいろな土地で詠われた歌があるんですね。

田児の浦ゆ、うち出でて見れば、真白にそぞ 富士の高嶺(たかね)に 雪(ゆき)は降りける (田児の浦の裏沿いの道を通って、視界が開けたところに出てみると、富士山の高嶺に真っ白に雪が降り積もっていることだ)巻三・三一八...P.122

田児の浦に関してはどこなのか諸説あるそうですが、今の由比辺りの海岸と推定されているそうです。このあたりよく車で通りますが、綺麗なところです。万葉人も同じようにこの景色を愛していたのかと思うと感慨深いです。

男神(ひこかみ)に 雲立ち上り しぐれ降り 濡れ通るとも 我れ帰らめや (男体山に霧が立ち上って時雨が降り、びしょ濡れになろうとも、この楽しい一夜の半ばでかえったりするものか) 巻九・一七六〇 ... P.126

これは筑波山の歌だそうです。関東に住んでいる人にはなじみのある山ですね。私も以前はよく車やバイクで出かけました。昔から人気のあった山なんですね。

瓜食めば子ども思ほゆ 栗食めばまして偲(しむ)はゆ いづくより来りしものぞ まなかひにもとなかかりて 安寐(やすい)し寝(な)さぬ (爪を食べるといとしい子供が思われる。栗を食べるとそれにもまして切なく思われる。いったいこの子の面影はどこからやってきたものなのか。目の前にむやみにちらついて、安眠することもできないほどだ。) 巻五・八〇二 銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝 子にしかめやも (銀も黄金も玉も、子供という宝にくらべたら何のことがあろう。どんなに優れた宝も子供に及びはしないものだ。) 巻五・八〇三

これは山上憶良の有名な歌ですね。なんていい歌でしょう。数千年の時を超えて共感できます。山上憶良さん、子煩悩だったんですね。私もそうなので本当に共感します。子供を見ていると、なんでこんなに可愛いの?、と頭がおかしくなりそうです。こうした気持ちは不変なんですね。飲み会などで子煩悩なパパ同士で育児ネタで盛り上がることがよくありますが、山上憶良さんとも盛り上がれそうです。 それにしても万葉集っていい歌が多いと思います。それに比べると一般によく知られている百人一首は恋愛の歌が多く、何か軽く感じられ共感できないものが多いです。