心に残る本でした。きっと、
大阪万博、
ジョニ・ミッチェル、ベレットなど70年代のノスタルジックな雰囲気が漂い、道具立てが良いからでしょう。
三丁目の夕日みたいに、映像化したら素晴らしい映画になりそうです。
タイトルの帯は、”「もし、あの人との人生を選んでいたら...・ 1970年、万博の夏-"。45歳で病死した女性翻訳家が娘のために残した4巻のテープで自分の人生、過去の恋、を語る物語。
大阪万博で出会った謎の多い京大生との恋。そして波乱。一気に最後まで読みました。かなりのヒットです。
この亡くなった女性翻訳家は1970年代を保ち続けているような方で、昼真っから「J&B」を飲み、子供の誕生日会で
ジョニ・ミッチェルを引き語りし、ベレットを運転し、ソファーに寝転んで洋書を読むような方。こういう自分の世界を持っている方、素敵ですね。本書で特にいいのは、本書の語り手がこの女性翻訳家の娘の夫であること、そして女性翻訳家亡き後はこの男性がベレットを運転していること。なんでもないことのようですが、こういうの、なんかすごくいいですね。車、特に古い車は小説のすごくいいアクセントになります。
蓮見 圭一さんは1959年生まれ、新聞記者等を経た後本作でデビュー。そしてベストセラーに。有名な方だったんですね。こういう方の小説を読むと、最近の若い作家の軽い文体との違いをまざまざと感じます。軽い文体が悪いわけではないですが、やっぱり格が違うな、と感じてしまいます。
本書のタイトル、”水曜の朝、午前三時”は最後まで意味がわからなかったのですが、
サイモン&ガーファンクルの曲なのですね。
サイモン&ガーファンクルはよく聞きましたが、この歌は知りませんでした。歌詞は、罪を犯して朝早くに彼女の元を
去っていく男の心情を歌ったもののようです。本書との関連は何となくわかるような、わからないような...