記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

サブリミナル・マインド

著者はカリフォルニア工科大学教授の認知心理学者。東大文学部心理学科を出た後、MITでPh.Dを取っている方。さすが切れ味するどいです。 人は自分が思っているほど自分のことをよくわかっていない、というのが主テーマ。これを様々な実験事実から突き詰めていく。  これに関してはもっともだと思います。自分が一日何を考えているか、自分でコントロールしているとは思えない。ふらふらっとどこからか思考が湧き上がって来て、あれこれ考えている。朝起きて、自分がまず何を考えるかなんて予測不可能。仕事などで論理的な事を考えるときは集中して論理的な思考をしているが、それ以外はあっちこっち、思考がふらふらしている。これは決して自分でコントロールしているわけではない。自分は自分が思っているほど自分のことをよくわかっていない。  特に印象に残っている点は、MITのロボット工学者、ブルックスが主張している、昆虫並みの運動制御と、ヒトのような高等な認知-行動系のふるまいは、実は連続的であり、同じ単純なメカニズムの階層的な集積で構築されうるということ。それを実際に模型で表現しているということ。  人間って高級なイメージがありますが、実はそんなもんなのかもしれませんね。ヒトが何故神や死後の世界を考えるかというと、死や未知の世界が怖いからで、それは本能的な恐怖に基づいている。昆虫との違いは単にその複雑度の圧倒的な違いだけなのかもしれないですね。哲学・宗教などで人間の探求がされてきましたが、こうした生理学的な研究が一番人間の本質に迫っていくように思います。  朝会社でまず何を考えるかというと、目の前の課題をどう乗り切るかということ。これも結局、このままだと不快なことになるからその回避策を考えているのでしょう。思考の背後には快・不快が潜んでいるのだと思います。
サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)
(1996/10)
下條 信輔

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