記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

『空海の風景』を旅する

『空海の風景』を旅する『空海の風景』を旅する
(2002/08)
NHK取材班

商品詳細を見る
司馬遼太郎作「空海の風景」の番組を制作したNHKスタッフによる空海の風景の旅。司馬遼太郎空海の風景」の抜粋もところどころ入っていて「空海の風景」の紹介ともいえる本で、写真もあり気楽に楽しめました。 印象に残った点。

  1. 空海は語学に異常なほど長け、のち唐に行ったときは通訳の必要がまったくなく長安の人々を驚かせた。P.74
  2. 空海は大学をめざし15歳で讃岐を出ていく。P.85
  3. 密教は7世紀インドで成立したといわれている。P.99
  4. 大日経」は従来の仏教経典とはまったく異質の新鮮さを持っていた。それまでの経典ではブッダが説法する形式をとるのに対し、、「大日経」では歴史上の実在人物ではない法身大日如来が仏の悟りの知恵とは何かを説く。P.131
  5. 恵果は空海に出会ってからひと月もたたないうちに最初の灌頂を行い、わずか2か月後には密教最高位の阿闍梨位を譲り渡す灌頂を終えた。恵果は60歳でありこのとき病の床にあった。自らの死期を悟った恵果は空海が訪ねてくる3年まえから一千人いたという弟子の中の7人を選抜しすでに法灯を護ることを伝え灌頂も済ませていた。しかし最後の伝法灌頂にはいたっていなかった。P.180
  6. インドで成立した密教はふたつの流派を産んだ。ひとつは大日経でありもうひとつは金剛頂教を軸とする流派である。それぞれの方は師から弟子へ阿闍梨位を相伝することで引き継がれてきた。金剛頂教の伝授では第1祖は大日如来。第7祖が恵果となる。5、6祖までは来唐したインド僧であり、恵果は中国人として初めて受け継いだ阿闍梨である。恵果から阿闍梨を譲位されるということは、密教の正統後継者になることを意味し、空海大日如来から数えて第8代の祖師となるということである。加えて恵果はそれまで別々であった大日経系、金剛頂系ふたつの系統をはじめて一人身で受け継いだ阿闍梨であった。P.181
  7. 密教では真言の伝授が非常に大切である。書いた言葉ではなく、師によって体ごと伝えられた真言こそ効果があるとされている。例えば密教ではその力によって雨を降らせたり止めたりできるようになる。P.184

こうしてみると、空海は本当に天才型の人物だったのですね。今の感覚でいうと、例えば英語ぺらぺらで、スタンフォードに留学してトップまで上り詰め(教授になり)、凱旋帰国したようなイメージでしょうか。密教の正統な後継者が中国人でなく日本人になったというのがすごいです。 これを読んで、改めて密教というのはなかなか庶民には縁遠いものだと思いました。”真言”といわれてもうーん、という感じです。まあだから秘密の仏教、密教なのでしょうね。当時の人たちにとってはこの真言が国家守護など従来の仏教以上に現世利益をもたらすということで重宝されたのでしょうね。 空海は般若心経秘鍵の中で、『般若心経』は真言密教の経典である、といっているそうです。確かにあの最後の、”ギャーテーギャーテーハラソーギャーテー”というところは真言っぽいですね。 余談ですが、”川崎大師”とか名前に大師がつくお寺がときどきありますが、これは普通、弘法大師である空海のことを指すんだそうですね。私は数年前まで知りませんでしたが、空海は結構身近な存在なのですね。10年くらい前に川崎大師に初詣にいったことがありますが、その時は全く意識していませんでした。真言宗のお寺だという意識もありませんでした。まあ日本人ってそんなもんですよね。改めて考えると、密教は現世利益的な面も持っているので、初詣などに向いているお寺なのでしょうね。