記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

生物と無生物のあいだ

人気の本だけあって非常におもしろかった。生物学の一般的な解説ではなく、ドキュメンタリーチックに著者の研究生活や野口英世の話、DNA二重らせんの発見、キャリー・マリスという天才科学者、ウイルスなどが描かれていて、ぐいぐいと引き込まれていきました。特に、生物はすごい速さで自分を入れ替えていて、半年や一年後には全くその中身は入れ替わっているというのはインパクトが大きい。よく聞く話ではあるのですが、著者の書き方が非常にうまい。こういうのを文章力というのだと思います。

特に、生物学の研究者としての研究生活がリアルに描かれているので、研究者を目指そうとしている若い方などが読むと参考になり良いのではないかと思います。研究者というとアカデミックな、華やかなイメージもありますが、実態は著者が描いているように、地味なひたすら実験にあけくれる日々なのでしょうね。著者はマンハッタンやボストンなどで研究生活を送っていますが、実態はポスドクとして薄給で奴隷のようにこきつかわれる日々。海外で研究生活というと華やかなイメージがありますが、イメージが変わりました。日本人はまじめでよく働くので重宝されるのでしょうね。

著者は非常に文章がうまいと思いますが、「私は単純に、京都盆地の湿度から逃れて、ニューヨークの街路を吹き抜ける乾いた風を感じてみたかったのだろう(P.89)。」といった表現はちょっといきすぎな感じ。著者のあの独特の外観を思うと、失礼ながらちょっと笑ってしまいます。