記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

12歳の少年が書いた 量子力学の教科書

著者 : 近藤龍一
ベレ出版
発売日 : 2017-07-01
怪しい書名の本だが、ブックオフで安く売っていたので購入。本当に著者が12歳の頃に書いたらしいが、内容がしっかりしていて驚き。入門書と専門書の間の中間レベルの本を目指したとのことで、まさにその通り、文書だけの啓蒙書と、数式だらけの専門書の間のほどよい本になっている。この、啓蒙書では満足できないが専門書はちょっと辛いという層は結構いるのではないかと思う。中間レベルというと、広江 克彦さんの「趣味でxx]シリーズを思い浮かべるが、これよりは入門書寄りで、数式が少ない。 なお、うさんくさい書名だが、「この本の題名は出版社が決めたもので、私が決めたものではない。だから”教科書”等のネーミングにはあまり気にしないで頂きたい」とのことである。出版社は販売第一なのでインパクトのある名前にしたかったのだろうが(実際このタイトルなので話題になっているようだが)、せっかくの良い本なので、こんな受け狙い的なタイトルではなく、もっとまともなタイトルの本にすればよかったのに、と思います。実際に書評などを見ると、読んでる人の興味は”12歳の子が書く量子力学の本というのがどんなものか”といったところが多く、本当に量子力学に興味をもって読む層は多くないのでは、と感じました(量子力学というよりは天才少年に対する興味)。まあ著者もたくさん売れて印税がたくさん入るほうが嬉しいとは思いますが。どうみても教科書ではなく、副読本です。そこは出版社の軽さ、商業主義を強く感じました。 12歳というと小学校6年生。自分を振り返ると、当時科学少年だった私はアインシュタインに興味を持ち、ブルーバックスで都筑先生の相対性理論の本を読んで、さっぱりわからなかったことを思い出しました。今考えると、ニュートン力学も理解していない小学生に相対性理論の理解は無理でした。ニュートン力学は理系なら高校生で習いますが、そうした基礎を踏まえると相対性理論の不思議さ、おもしろさがようやくわかってくる。量子力学も同じく、ニュートン力学の基礎がないとその不思議さは理解できない。それなりの基礎の積み上げが必要である。自分の息子(10歳)を見ているとわかりますが、子供に抽象概念を教えるのは本当に難しい。抽象的な思考能力は年齢とともに育成されていくものだと思います。そういったことを踏まえると、12歳で量子力学レベルまで達した著者は本当にすごいと思います。