数学する人生
多変数関数論で日本が世界に誇る数学者、岡潔さんの随筆に、独立研究者(?)森田真生さんが編集と解説を加えた本。数学に仏教(釈迦、道元)や芭蕉と絡めて数学や人生、芸術等について語っています。
仏教について語っているところはピンと来なかったが、数学を禅と絡めて語っているところが良かった。岡さんにとっては数学と禅は本質は一つとのこと。自分を捨てて数学と一つになる境地が禅と同じだ、ということでしょう。そしてこれが子供が算数、数学を学ぶ第一の意義だ、と語っている。数学を学ぶことの意義に対する独創的な意見だと思います。これを普通の人が言っていたら説得力がないが、世界的な業績を誇る岡さんが語っていると説得力がある。
私もこの点は非常に共感します。大学の頃、集中して数学に取り組んでいるとき、確かにその時は自分も、時空も超越して、数学の世界に入りこんでいることがあり、なんだか不思議な感覚に捕らわれたことがあります。自分を忘れて純粋な数学の世界に入り込む、こういうのが禅に通じるのでしょう。
以下、引用。
「数学の本質は、主体である法に関心を集め続けてやまないということである。このことは当然「算数」のはじめからそうなのである。だから算数教育は、まだわからない問題の答、という一転に精神を凝集して、その答えがわかるまでやめないようになるということを理想として教えればよいのである。...法に精神を統一するためには、 当然自分も法になっていなければならない(主催者の位置は客体の所にあるのだから。そうすると当然「自他の別」を超え、「時空のわく」を超えることになる)。そうするといわば内外二重の窓がともに開け放たれることになって、「清冷の外気」が室内にはいる。これが児童の大脳の発育にとってきわめて大切なことであって、義務教育における数学教育の意義の第一はここにあるようにおもわれるのである。」
ところで、この編集をしている森田真生さん、独立研究者、という謎の肩書の方です。研究者というからには何か研究されているのでしょうが、あまり研究成果を発表している様子がありません。丘サーファーみたいなものでしょうか...