新聞を読んでいたらサラダ記念日で有名な
俵万智さんの記事が載っていました。未婚のまま
男児出産後、仙台に住んでいたが震災後、
那覇へ移住。その心境を読んだ短歌。
子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え
さすがです。この31文字で全て伝わってくる気がする。
サラダ記念日がベストセラーになったのは1987年とのこと。もう25年も前のことなんですね。恋愛などを詠ったサラダ記念日、当時彼女のいなかった私は自分とは別世界の幸せそうな人だな、と思った記憶があります。この歌はすごい印象に残っています。こんな風に言い合える恋人がいたらいいなあ、と高校生であった私は思っていました。
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
そんな幸せそうな俵さんがシングルマザー、意外でした。調べてみると、トリアングルという
私小説のようなものを書いているらしい。読んでみました。
良かったです。恐らく俵さんの体験を元にしたと思われる女性の、既婚男性との不倫、年下の男との交際、など。そして端々に散りばめられた珠玉の短歌。とてもリアリ
ティーがあります。そしてさすがに現代を代表する
歌人、文章が洗練されてます。特にこの本は年下のボーイフレンドとの初めてのお泊りシーンから始まるのですが、リアルです。
それとともに驚きなのが俵さんの写真や短歌から想像するイメージからは想像できない露骨な性描写。こんな人だったんだ。
歌人で元高校教師、おかっぱ頭、お高いイメージがあったのですが、身近に感じられるようになりました。
主人公は既婚カメラマンと取材旅行を共にするうちに心惹かれ、不倫をするようになり最後には子供を望むようになります。これ、俵さんがモデルなんですかね。この人、実際にカメラマンとコラボした本を何冊も出しているじゃないですか。ということはこのカメラマンが子供の父親なのか?、そんな風に思ってしまいます。まあ人のことなので誰が父親でもいいですが。それにしてもカメラマンってのはもてますね。よくドラマや小説でヒロインの相手役として出てきますね。本書にもこんな歌がでてきますが、あのファインダーを覗くまなざしに女性は惹かれるのでしょうか。
つり人を乗せて到着する船にシャッターを切るまなざしがいい
P.38
そして次に印象的なのが、豊富な食事や酒のシーン。パリでフォアグラや
アーティチョークを買い込み食事をしたり、北海道で毛蟹を買ってきて食べたり。おしゃれでおいしそうです。
池波正太郎の小説に通じるものがあります。それにしても飲んでるシーンが多いですが、この人酒好きなんだろうな、と思いました。読んでいるとワインが飲みたくなります。
そしてやはり短歌は格別。一番印象的だったのが不倫相手とその娘とともに食事に行った時の歌。なんかすごい歌だなと思いました。世の中には様々な不倫ソングなどありますが、この31文字にはそれを圧倒する迫力を感じました。やはりこの人、ことばの天才だと思います。
焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き
P.235
俵万智さん、遠い存在のように感じていましたが、身近に感じられるようになりました。ちょっとファンになりました。