記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

量子とはなんだろう

ものすごくわかりやすかった本だった。著者の説明がうまいことと、具体例が豊富であるからだろう。平易な解説ながら、内容は量子力学の基本的なところからファインマン経路積分ベルの不等式量子コンピュータまで非常に豊富。著者は慶応の商学部の教授。物理を専門としない学生向けに物理の講義を行っているということで、わかりやすい説明が磨かれているのかと思う。

特に5章、量子の群像で、量子力学を記述する方法として、ハイゼンベルク行列力学シュレディンガー波動力学、そしてファインマン経路積分を数式を交え説明しているところがわかりやすくて良かった。なかなか理解が難しい経路積分だが、粒子には大きさ1の複素数が付随し、粒子があらゆる経路に沿って動くとともに複素数も演習をぐるぐる回る”という説明がわかりやすい。ファインマンが確か”光と物質のふしぎな理論”で一般向けに同じような説明をしていたが、それを一歩踏み込んだ形で説明されていて理解が深まった。そして経路積分の考えをもとに”量子力学とはプランク定数程度に緩くなった古典力学とでもいうべき体系”という説明が非常にイメージを喚起された。

頭の良い子は将棋で育つ

将棋により「先を読む力」「集中力」「記憶力」等が身に着く等の解説。先を読む力、大局観が身に着く等、非常に納得。最後に著者の将棋人生の振り返り。小1で父から将棋を教えてもらってから、アマ4段の近所のおじさん、そして道場に通うようになりめきめき力をつけていく。そしてプロの引退から「教える棋士」へ。著者の将棋への熱い思いが伝わってきて将棋をやりたくなる良い本でした。

私は今は主に囲碁をやっているのでなかなか将棋まで手が回らないのですが、時間ができたら将棋にも打ち込んでみたいところです。囲碁も将棋もそうですが、中途半端に打って負け続きだとおもしろくないですが、真剣に打ち込むとどんどん楽しくなってくるものだと思います。

 

転職の思考法

 

いろいろと刺激になる本だった。転職を進めるというよりは”転職というカードを持つことで、結果、今の職場も絶対に良くなる”ということに非常に共感。お金のために会社にしがみつくことが目的になってしまうと人は腐ってしまうのかもしれない。いつでも辞められる、と思っている人の方が思い切って生き生きと働けるのでしょう。

Pythonではじめる数学の冒険

シンプルなPythonコードで数学に親しめる楽しい本。

マンデルブロー集合もシンプルなコードで簡単に書ける。とはいえ最初動かなかったがよくよくみたらreturn分のインデントを間違えていた(改ページしていてインデントがわかりにくかった)。

 

完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者

100万ドルの受領を拒否した謎の天才数学者ペレルマンに興味がありざっと読んだ。ペレルマンが少年時代を過ごしたソ連における数学教育など詳しいが、ざっと読んだだけでは周辺のことに詳しい分ペレルマン本人についての情報がつかみにくい印象(あまり情報が無いからだろうが)。ただ爪や髪を伸ばし放題の風貌も含めかなりの変人であるイメージは伝わってきた。ペレルマンユダヤ人であること、当時のソ連の教育におけるユダヤ人差別、コロモゴロフが同性愛者であったこと、など知らなかった。それにしてもユダヤ人から天才が生まれることが多いのは改めて驚く。

子どもに勉強は教えるな-東大合格者数日本一 開成の校長先生が教える教育 (単行本)

著者は開成の校長、元工学系の東大教授。子供に勉強しろというのはやる気をそぐ逆効果でありするなとのこと。そうではなくどうすればよいかというと、子供の興味の半歩先にごほうびをまく、子供の話をよく聞く、ほめる等いろいろ記載があったがいまいちぴんとこなかった。

”すべての成長はS字カーブを描く”、”成長を実感すると楽しくて仕方なくなる”といったところは私も非常に実感しているところで非常に納得した。私は数学、物理、英語など学習を続けているが、非常に実感する。数学などなかなか難しくなかなかぱっとわかるものではないが、それでも粘り強く学習しているいつのまにか理解が進んでいるということがある。こういう成長を実感すると癖になってやめられなくなる。こうした喜びを子供にも伝えたいところである。

遥かなるケンブリッジ

著者の1987年の1年のケンブリッジ大学での客員研究員としての生活を描いているが、1年とは思えないほど濃い内容でとても良かった。またイギリスやイギリス人についての説明が興味深く、イギリスに対する理解が深まった。ただ自分のいったジョークが受けた、的な自慢めいた記載も多く少し鼻につく。メインは次男が学校でいじめられた時の父親としての心境、行動だろうが。このあたり、子供も心配だが仕事も重くてなかなかそこまで手が回らないなど同じ父として非常に共感するものがあった。
 ルース・ローレンスという15歳で博士論文を書いている天才少女の話が出てきた。これに対して著者は、こうした天才児は時々報道されるがその後大成したとういう報道は一度も聞いたことがない、と否定的な感想を述べている。実際、このころから25年ほどたっているが、ルース・ローレンスさんはイスラエルの大学の准教授であり、それほど目立った業績を上げている様子はない。著者は数学ばかりやってきた彼女にたいし、野山を駆けまわったり、恋をしたり、文学や音楽に感動するなどといった経験を通して得られる情緒なくして良い研究ができるのだろうか、と心配する。このあたりも共感した。
 
 ところで本書を読むと藤原先生は数学で非常に活躍しているような印象を受けるが、数学の本を読んでいても藤原先生の業績といったことを聞いたことがない。また、藤原先生は随筆を多数執筆しているが、数学書はほとんど書いていないように思う。researchmapを見ても論文数が少ないように見える。藤原先生の本は結構上から目線的な発言が多いが、ご自身の研究者としては実績どうだったんだろうとやや疑問に思う。
と、いろいろと気になることはあるが、藤原先生の本はとても読みやすくかつ楽しく、どんどんと読んでしまう魅力がある。