記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

はじめての〈超ひも理論〉

はじめての〈超ひも理論〉 (講談社現代新書)はじめての〈超ひも理論〉 (講談社現代新書)
(2005/12/17)
川合 光

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著者は京大教授の川合光さん。超ひも理論などを研究し、サイクリック宇宙論を提唱している方。 このサイクリック宇宙論、初めて聞きましたが、現在の宇宙はビッグバン-ビッグクランチを繰り返して50回目程度の宇宙であるという理論だそうです。まだ試論の段階とのことですが。壮大な理論ですね。 ところで本書はとても読みやすい良い本でした。本書は川合さんから聞いた話をジャーナリストの高橋繁行さんが自分のことばでまとめなおしたものとのこと。そのせいか、とても言葉がこなれています。やはり一般向けのこうした本は学者ではなく専門の物書きの方が書くほうが良いのでしょうね。 こうした本は大体テーマの超ひも理論に限らず、それに至る前提知識としての素粒子論や相対論の解説が多くなりがちである。本書もそうだが、その解説がわかりやすく非常によかった。ゲージ理論、インフレーション宇宙論などもわかりやすく書かれている。特に168ページに在る”超ひも理論に至る道”では、物理理論の変遷が2ページの図式にまとめられていてわかりやすい。 特に、"標準模型は理論を構築するために、数多くのパラメータを含んでいる。アップクォークの質量、など。超ひも理論の鮮やかな点は、理論の中に一個のパラメータも含んでいないこと。クォークの世代数やそれぞれの質量、ニュートン定数まで、物理量の全てがひとつの理論から説明できる。"という点は印象的だった。超ひも理論は現段階では仮説の域を脱しない、とはよく聞く。ローレンス・クラウスさんも、”我々の宇宙と何の関係もない理論かもしれない”と痛烈な見解を述べていた気がする。しかしながら、このような説明を聞くとなんだか素晴らしいもののように聞こえ、学習意欲をそそられる。まなんでみたいものだが、本当にまなぶには相当敷居の高い理論である。わかりやすい本がでることを期待する。