記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

ポケットの中のダイヤモンド

ポケットの中のダイヤモンド―あなたはすべてをもっているポケットの中のダイヤモンド―あなたはすべてをもっている
(2006/06)
ガンガジ

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2年ほど前から読んでいるこの本、最近も読んでいましたがやはり秀逸。汲んでも汲みきれないほどの内容の深さを感じる。ただ、翻訳と本のレイアウトは気に入らない。翻訳の日本語はほとんど女子高生の作文のような低レベル。訳者はICUの語学科を出ている方。恐らく英語はできるのだろうが、日本語が低レベル、直訳に近い。これに比べるとクリシュナムルティの本は大体どれも日本語が格調高かった。つくづく翻訳とか英語を職業にする人は日本語能力が高くないと駄目だと感じる。翻訳を手がける方は英語ができるのは当然として、英文科卒より実は国文科卒などで日本語を磨いた方のが向いているのでは、と思う。本のレイアウトは妙に上下の空白が大きく無駄で気になる。 とはいえ、原本が素晴らしいので本の内容は秀逸。現在絶版でAmazonで見ると中古で8,900円の高値となっていた。別の方の訳で再販されたら良いだろうと思う。 今週読んでいて印象に残った箇所。

コロンブスやほかの探検家が「新世界」を発見したとき、彼らはみな帰ってきて、「俺たちが知っている以上のものがあそこにはある。地球は平面ではない」と言いました。でも多くの人は、「いや、俺はいかない。海の怪物に捕まってしまう。地球の縁から落ちてしまう」と答えたのです。私たちはこれと同じ原始主義で私たちの感情を眺めています。あなたに地球の縁から落ちる勇気があれば、地球を支えているものがあなた自身であること、あなたはあなた自身から「落ちる」ことはできないことを知るでしょう。あなたにできるのは、あなた自身の中により深くはいっていくことだけです。(P.184)

将来のことや仕事のことなどを考えていると強い不安感・恐怖感に襲われ、逃げ出したくなることがある。こうした時、どこかに吸い込まれてしまいそうな、どうしようもない恐怖を感じ、何とかしよう、逃げよう、と考える。これに対してガンガジは、恐怖や不安といった感情は怖くない、逃げるな、逆に飛び込んでいけ、どこまでいってもあなたは自分から落ちることはない、といいます。このコロンブスの例えはわかりやすいです。 この本全般で繰り返し彼女が述べていることは、こんなことだと思います。人は様々な欲求・感情を日々感じている。”このままではまずい、なんとかしないと””誰それが気に食わない、なんとかしてやりたい””人生の目的を知りたい””悟りを開きたい”等々。人々はそうした欲求や感情に対して何とかしようとあれこれ戦略を考えていきはまっていく。例えば、”悟りを開きたい”→”よし、毎日瞑想しよう”→”なかなか悟りが開けない、辛い”とか、”悟りを開きたい”→”よし、ガンガジとか、スピリチュアル系の本を読もう”→”読んだけど何も変わらないなあ...”、とか。 だが、こうした欲求に対して思考で対処するのではなく、実は欲求を欲求として体験することに留まる、という選択肢があることに気がつくことが解放につながる。こうした欲求に対して何もしない(止まる)ことで、人は常に静かである意識に気がつくことができる。 本書ではこんなことを、いろいろな語り口で繰り返し語っているように思います。 私も”真実を知りたい””安らぎを得たい”といった欲求に突き動かされ、こうしたガンガジやらクリシュナムルティ、禅などスピリチュアル系の本を読み漁ったりしていますが、本当はそういうことをしないで、こうした欲求に対して”何もしない”というのが解なのかもしれません。”求めれば求めるほど離れていく”とガンガジの師であるパパジが言っていました。"Just be quiet"とも言っています。つまりあれこれ本を読んだり修行したりすればするほど真実から離れていく、といったところでしょう。とはいえ、なかなかこの逆説の論理が難しいところです。