記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

脳と気持ちの整理術

脳と気持ちの整理術―意欲・実行・解決力を高める (生活人新書)脳と気持ちの整理術―意欲・実行・解決力を高める (生活人新書)
(2008/04)
築山 節

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著者は脳医学関連の医学博士。脳科学の観点から意欲・実行・解決力を高めるための工夫を説明します。これは本当に良い本でした。ああ、確かに、あるある、という点で溢れている本でした。素晴らしい。 これを読んでまず思ったのは、脳もハードウェアであり、うまく使うためにはその特性をよく理解して使うことで効率的に使えるんだろう、ということです。こうした脳科学者の知見、貴重ですね。

明日には「明日の私」がいるのです。来月には「来月の私」がいる。一年間で考えれば、365日分の「私」がいます。つまり、常に「その日の私」が「その日の仕事」に対処している...時間の枠組みの中で、その「一対一の状況」が繰り返されているだけなのです。人がパニックに陥りやすいのは、そういう多次元的な見方を忘れ、一次元的な捉え方をした時だと思います。つまり、すべての仕事や問題に「今の私」が対処しなければいけないと考える。四方八方を敵に囲まれ、進退窮まったかのように思い込んでしまうのです。...本当はそうではなく、一か月の仕事は「30日分の私」で対処すればいいのです。P.75

なるほど、確かにそうですね。人生においても数十年で対処すべき問題に対しても、それを考えている現在に全てのしかかっているように感じると耐えきれない。しかし、これは幻想なんでしょう。”明日には「明日の私」がいる”、いいことばですね。

「働きアリを見ていると、そのうち何割かは働いていない。その働いていないアリを取り除いて、働いているアリだけを残すと、そのうちの何割かはやはり働かないアリになる」という話を聞いたことがあるかと思いますが、脳の性質にはこれと似たところがあります。...たとえば、非常につらいと感じる仕事をしているときのことを考えてみてください。その他の仕事が自分にとって「好ましいこと、楽なこと」であるように思え、「そういう仕事だけして給料をもらえていたら、不満はないのに」と考えると思います。ところが、実際にそういう仕事だけをしていればいい状況になったら、どうなるか?自分にとって「好ましいこと、楽な事」だったはずの仕事の何割かが、「嫌な事、面倒な事」にあり、結局、「それさえなければ不満はないのに」と思うようになるはずです。...つまり私たちが何を自分にとって「好ましいこと、楽な事」だと判断するかは、絶対評価ではなく、相対ひょうかである側面が大きいのです。P.177

これも確かに、と普段よく感じる点です。嫌な仕事というのは常にあるものですが、自分で感じる嫌な仕事というのは確かに絶対評価でないことが多いですね。ものすごい大変な仕事があるとき(トラぶっている時とか)、相対的にその他の仕事が軽い仕事に見える。逆にそれほど大変でないときは、ちょっとした仕事でも負担に感じることがある。相対的に、自分の中で嫌な仕事、そうでない仕事を2:8か3:7に分けている気がします。つまり、嫌・嫌でない、というのは自分で作り上げている相対的な区分ということですね。つまり、仕事に限らずそうですが、嫌・嫌でない、というのは自分で作り上げた境界であり、嫌なことを排除しよう、というのは無理、幻想、なのでしょう。これPapajiがWake up and Roarで言っていたこととに通じます。 Papaji: Wake up and Roar
  1. 社会に出て私たちに与えられる問題は、自分にとって五歩先のことであることが多い。今の自分の脳の力では解決できない。その解決できない五歩先のことばかり考えていると、意欲を起こすのは難しくなる。五歩先に解決がある問題を分解して、今の自分にもできそうな一歩目をまず見つける。...そうやって一歩一歩進んでいくうちに、脳内のネットワークが強化されて、やがては五歩先まで一歩で飛ぶような仕事もできるようになってくる。その一歩一歩を自分でみつけていかなくてはいけない。P.26
  2. 感情系を司る大脳辺縁系の中に、側坐核と名付けられているごく小さな器官がある。一般的にやる気の発生に著しく関係していると考えられている器官である。側坐核を刺激するには体を動かして作業をするのが有効である。...作業をすることによってある種の興奮状態が発生するという原理は、「作業興奮」と名付けられている。...仕事上の厄介な問題解決や何度の高い試験の突破などを期待され、本人もそれにこたえようと必死になっているる。ところがなかなかクリアできない。そのうちに短時間の集中で済む作業を連続してこなしている時間帯が生活の中からなくなり、作業興奮がまったく得られないまま、いつも難しい問題に頭を悩ませているような状態になっていく。そういう患者さんには、次のように指導している。「脳に難しい問題を考えさせたり、パワフルな仕事をさせたりするためには、助走がいる。それをなくして、遠くまで飛ぼうとするかのような仕事ばかりをしようとしていると、意欲が起こらなくなってしまうことがある。...5分の集中で済むような作業、10分で解決でき量な作業、そういう簡単な作業をある程度連続させていったとき、もっと長い集中にも耐えられるような脳の状態ができる。P.38
  3. 解決しなければいけない問題、やらなければいけない仕事がたくさんあるときに、ただ漫然とそう思っているだけで、分析をしていないために過剰にネガティブになっている。...少しだけ意志の力を働かせ、問題を一つづつ確認し、重要度や緊急性を判断していけば、少なくとも根拠のない問題の過大評価は止められます。...それができないと問題を「見えない敵」にしてしまっているのです。P.62
  4. 問題を見える化するもっとも初歩的な技術は紙に書きだすことです。...できるだけ一枚の紙の中でするのがいいと考えます。自分が置かれている状況の全体像が見えやすくなるからです。P.65
  5. 明日には「明日の私」がいるのです。来月には「来月の私」がいる。一年間で考えれば、365日分の「私」がいます。つまり、常に「その日の私」が「その日の仕事」に対処している...時間の枠組みの中で、その「一対一の状況」が繰り返されているだけなのです。人がパニックに陥りやすいのは、そういう多次元的な見方を忘れ、一次元的な捉え方をした時だと思います。つまり、すべての仕事や問題に「今の私」が対処しなければいけないと考える。四方八方を敵に囲まれ、進退窮まったかのように思い込んでしまうのです。...本当はそうではなく、一か月の仕事は「30日分の私」で対処すればいいのです。P.75
  6. 脳は基本的に複数のことに集中できません。これは視覚で考えてみるとわかりやすいでしょう。私たちは風景の中の一点を集中して見つめようとするとき、他の一点にも同じレベルで集中することはできない。...これは視覚だけでなく、脳全般の性質としていえることです。...一つ一つの問題に深く集中するためには、この「他のことが気になる」という感情を上手く処理することが大切なのです。P.83
  7. 原則論として脳は変化に対して反応するものです。壁に貼られたポスターのようにいつまでも変わらない風景を眺めていて飽きないという人はいないでしょう。だんだんと脳が反応しなくなってくるはずです。P.91
  8. 出力して初めて自分の脳を通したことになる。...記憶は入力でなく出力をベースとして考えた方が良い。...覚えたい情報は最低一度は出力する。余計な手間がかかると思われるかもしれませんが、そうした方が、実は時間のロスは少ないはずです。P.100
  9. 全体を一度に理解するのが難しい本を読むときには、中に出てくる重要な単語や特徴的な言葉を拾いながら読んで行って、一章読み終わったところで、そのキーワードを一枚のメモ用紙などにまとめる。それを見ながら、「どんなことが書いてあったか」を思い出してみるのです。P.116
  10. 図やイラストが入っていなくても、それを思い描く。場合によっては、実際に手を動かして描いてみる。たくさんの情報を覚えたいときには、、そういうことも有効です。P,129
  11. 「働きアリを見ていると、そのうち何割かは働いていない。その働いていないアリを取り除いて、働いているアリだけを残すと、そのうちの何割かはやはり働かないアリになる」という話を聞いたことがあるかと思いますが、脳の性質にはこれと似たところがあります。...たとえば、非常につらいと感じる仕事をしているときのことを考えてみてください。その他の仕事が自分にとって「好ましいこと、楽なこと」であるように思え、「そういう仕事だけして給料をもらえていたら、不満はないのに」と考えると思います。ところが、実際にそういう仕事だけをしていればいい状況になったら、どうなるか?自分にとって「好ましいこと、楽な事」だったはずの仕事の何割かが、「嫌な事、面倒な事」にあり、結局、「それさえなければ不満はないのに」と思うようになるはずです。...つまり私たちが何を自分にとって「好ましいこと、楽な事」だと判断するかは、絶対評価ではなく、相対ひょうかである側面が大きいのです。P.177
  12. 人から厳しく批判された時のことを例にして考えてみましょう。人間には、自己防衛の本能があるから、自分を悪く言われたり、自分にとって不利益な行動をとられたりすると、最初はどうしても不快に感じます。...相手の立場に立って見て、どんな苦労をしているか、どんな不満を持っているか、その人から自分はどう見えているか、ということを創造してみる。...その「他人の脳で考える」ということをしばらう続けていると、人から批判されたり不利益な行動をとられたりして最初に感じた不快は、かなり消えているはずです。P.183
この12番目のポイントも有効でした。私もよく資料を作り上司にあれこれいわれへこんだりむっとしたりすることが多々あります。そんなとき、上司の立場を想像し苦労を考えてみました。すると、ああ上司もいろいろ苦労してるんだろうな、というのが想像できると、自分の気持ちも収まりました。