ガロア理論関係の本にはついつい手が出てしまいます。これは
ガロア理論というよりは対称性、
群論をテーマに、方程式の解の公式に関する歴史、そしてアーベル、
ガロアの登場、対称性の物理への展開といった歴史を生き生きと伝える良書。おもしろいです。著者は宇宙物理学者なので物理色が出ています。こういう本を学生時代に読むと数学に興味を持つ人が増えるでしょうね。私も息子にはこうした本を是非読んでほしいと思っています。なかなか中学校や高校の数学だけでは数学のおもしろさはわからないと思います。
印象に残った点は、
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ガロアは数学ばかりやっていて他をおろそかにしていた。そのため落第したり、、
エコール・ポリテクニークの入学試験で落ちた。二度目の受験でも落ちた。憶測では、
ガロアは計算をほとんど頭の中で済ませ、黒板には最終的な答えしか書かないたちだったので、思考の過程を残らず示すべき口頭試問では試験管の心象を悪くしたのではないか。
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アインシュタインは
純粋数学に対する態度は当初ずいぶん不熱心だった。数学者ミンコフスキーの数学の講義に欠席ばかりしていた彼は「怠け犬」と呼ばれていた。しかしながら
アインシュタインが
特殊相対性理論を公表したとき、対称性を使って理論に堅固な数学的土台を据えたのはミンコフスキーだった。
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アインシュタインが曲がった時空を宇宙にかんするみずからの新理論の礎にした結果、そうした時空を記述する数学的ツールが必要となった。この時彼の元クラスメートで数学者の
グロスマンがリーマンの非
ユークリッド幾何学等の数学的手法を教えてくれた。
アインシュタインはこう悔やんでいる。「私は数学を大いに尊重するようになりましたが、その難解なところを以前は単なる贅沢とみていたのです!」
天才すぎると入試で落ちたりするんですね。私の大学の同級生で数学的センスがすごい人がいましたが、英語ができず留年していたのを思い出しました。
あと、
アインシュタインは意外でした。
アインシュタインというとリーマン
幾何学を使った
一般相対性理論など非常に数学的なイメージがありますが、彼の物理学の表現のために必要になり数学者の支援で使ったという感じなんですね。
アインシュタインが数学を軽視していたとは意外でした。でも確かに、私は学生時
代数学専攻で、物理専攻の友人もいましたが、数学に興味を持つ人と物理に興味を持つ人は根本的に何か違うという感じがしていましたので、雰囲気はよくわかります。物理に興味を持つ人は物理現象に
マッピングされない抽象的な数学はどうでもいいというタイプが多く、数学に興味を持つ人は実施の物理現象にあまり興味を示さず、数学の中で自己完結した美しい世界を楽しんでいるタイプが多いように思いました。