30分くらいで読める100ページの薄い本です。内容的にはアドヴァイタ。通常の自我から気づきへ
アイデンティティーの変換を促す本です。たった一時間で人生が目覚める本、とのキャッチです。残念ながら私は目覚めませんでしたが。でも魅力的(刺激的)な本ではあります。
著者のティモシー・フリークは哲学者、思想家とのことで、様々な宗教や哲学の研究をしている方だそうです。
キリスト教の
グノーシス主義を研究したThe Jesus Mysteries、という著書が英国、米国でベストセラーになったそうです。
アドヴァイタの肝はこうした
アイデンティティーの変革(移動)なのだと思います。いわゆる
デカルト的な
唯物論的世界観から唯心論的な世界への移行。
学校教育により科学的な思考を叩き込まれるにつれ、前者の
唯物論的な世界観が正しいのだと思い込むようになりましたが、最近アドヴァイタの世界に触れるに連れその思いが揺らいできました。もともと人間が持っている自然な世界の捉え方はアドヴァイタ的な、一元的な世界なのだと思います。
唯物論的な世界ではどうしても矛盾を感じていました。悠久の宇宙の中で自分と言う存在はたった一瞬いきているだけで後はきえてしまう泡のような存在。それに何の意味があるのか。何かおかしい。そして孤独感ややりきれない気持ちを感じる。
ところがアドヴァイタの世界では、自分が世界を包含している。自分が生まれた、とか、時間の流れ、などは幻想である。こうした世界観には何の矛盾も感じない。何よりも重要なのは、人が生来持っている世界観はこうしたものであるという点だと思います。
本書で一番印象的な箇所。
皆さんは、ただのカラフルな点の集まりである画像が、突然、壮大な三次元立体画像になる絵を見たことがありますよね。覚醒した生き方でもこれと似た根本的な見方の転換が必要になります。
私が初めてこの手の絵を見たとき、イルカが見えるよと言われたのですが、点しか見えませんでした。....ところが、その瞬間は突然やってきました。点の集まりがイルカとなって、私の方に飛び出してくるではありませんか。...
覚醒した生き方の体験は、ちょうどこれと似たところがあります。...
立体画像を見るカギは、目の焦点をぼかすこと。覚醒を体験するカギは考え方を変えることです。
なるほど、そんなものなのかもしれません。アドヴァイタの覚者たちは口をそろえて、あなたはスクリーンに映る映像と自分を同一視している。あなたはスクリーンなのだ。映像で何が起ころうと関係ない、といったことを言います(紙とその上の文字に例える方もいますね)。これは立体画像を見るときと同じ、ちょっとした視点の転換なのかもしれません。恐らく目覚めに対して、我々は大げさに考えすぎで、実はちょっとした視点の転換、なのかもしれません。
著者の映像。