記憶の索引2

東京の普通の会社員の日記。本や映画の感想、自然観察、日々の思い、など。 興味は科学、数学、脳と心、精神世界、植物、育児、教育、ビジネス、小説、などなど。

数学の勉強

私は1990年前後に数学科の学生で数学を勉強していた。そして難解な数学書を前になかなか理解が進まず非常に苦労した思い出がある。

そして数学とは関係ない仕事に進みしばらく数学を離れていたが、インターネット時代となりAmazonで読みやすい本が簡単に手に入るようになり、また数学への興味が喚起されて細々と勉強をしている。

そしてつくづく思うのだが、最近はどうだか知らないが、当時の大学の数学教育はひどかったと思う。授業は定理・証明の連続で、枝葉の理解に追われ、全体像、幹が全然見えていなかったと思う。これはITでの例えでいうと、基本設計書を読まないでソースコードをいきなり読んでいるようなものである。数学科の授業としては、まず現代数学にはどういう分野があり、どんな繋がりがあり、どんなモチベーションで研究していて、といった背景、全体像を伝えて、学生のモチベーションを高めたうえで個々の分野の授業をすべきではないかと思うが、そのようなことは全くなかった。当時は数学ってそんなものかと思っていたが、卒業後に数論の大家、加藤和也先生の本を読むとまさにそのようなことが書いてある。そして非常に興味を喚起される。このような大学の授業だともっと学生のモチベーションはあがるだろうな、と思う。この”数論”などもまさにそのような書き方がしてあり素晴らしい。

 典型的な例でいうと、代数幾何学。私は学生の頃のイメージは、グロタンディックという驚異的な数学者が何千ページもある恐ろしい本を書いて、研究に入るまでの準備が非常に大変な恐ろしい分野というイメージしかなかった。しかしそのグロタンディックのモチベーションが数論にも使える代数幾何学を建設しようとしているといったことを加藤先生の本で知るにつれ興味が湧いてきた。最初に伝えるべきはこうした背景、モチベーションではないかと思う。これはビジネス文書などを書くときは当然実践していることである。 

そういう意味で、この本も背景を知るうえですごく良かった。

この本については以前書いた。

tantan777.hatenablog.com

 

こうしたことは、小学校~高校までの教育でもいえる事だと思う。小学校~高校までの学校の勉強を楽しいと思う子は少数派だと思うが、これもやはり背景や最新の研究とのつながりなどを伝えることが不足しているのではないか。中学校だと方程式や平面図形を勉強するが、これももっとガロア理論など数学の歴史に絡めた説明をすると生徒の興味が湧きそうである。そういえば以前、ガロア理論について調べていたら海城高校の先生が書いた文書が出てきた。学校の合宿か何かで生徒に教えていたような記憶がある。こういう学校は素晴らしいと思う。

私の長男は中学生だが、本当に勉強しない。ゲームばかりしている。勉強しろ、というと少しするが、続かない。これは本当に疲れる。しかし、これじゃだめだろう。本人が興味をもって自らやるようにならないとだめだろう。そのためにすべきことは、勉強せよ、というのではなく、興味を喚起する事だろう。学校でそれをやってくれると良いのだが、親としても何とかしていきたいと思っている。